9月の第3月曜日は敬老の日です。年を重ねるにつれ、どんなに元気な人でも体の機能などが少しずつ衰えてくるもの。たとえ住み慣れた家であっても、思わぬ事故につながる危険性が潜んでいますから、年齢に応じて住まいを改善していく工夫が必要です。
家の中で、どのような事故が起きやすいのか、どうすれば防ぐことができるのか……。高齢になっても安心&安全に暮らせる住まいづくりのポイントをまとめました。
◆家で起きる事故は交通事故の8倍以上
毎年、約3万人の高齢者が「不慮の事故」で亡くなっています。事故というと、交通事故や海・山・川などでの事故を思い浮かべがちですが、実は最も多く事故が起きているのは家の中。特に65歳以上の場合、居住場所での事故が8割近くを占めます。
※国民生活センター「医療機関ネットワーク事業からみた家庭内事故―高齢者編」より転載(2010年12月~2012年12月に13医療機関に寄せられた65歳以上の事故669件の分析)
◆家の中のここが危ない!
では、住宅内のどこで不慮の事故が起こりがちなのでしょう。下のグラフを見てください。国民生活センターの調査によると、圧倒的に多いのが「居室」。朝起きたとき、また夜間にトイレに行く際などにベッドから落ちたり、カーペットに足をとられたり、家具や床の段差につまずいたりして転倒することが多いようです。
2番目が「台所・食堂」なのは、誤飲・誤嚥による窒息が起こりやすい場所だからでしょう。ガスコンロの火が衣服に燃え移る「着衣着火」なども少なくありません。
次に危険なのは「階段」です。階段でバランスを崩したり、踏み外たりして転落すれば大ケガにつながるだけでなく、時には命も落としかねません。転倒事故は、玄関や廊下、浴室、洗面所、トイレでも頻繁に起きています。
※国民生活センター「医療機関ネットワーク事業からみた家庭内事故―高齢者編」より一部加工して転載(2010年12月~2012年12月に13医療機関に寄せられた65歳以上の事故669件の分析)
◆家の中での事故を防ぐには
65歳以上の人は65歳未満と比べ、事故の際の重症度が上がります。例えば、同じ場所で同じように転んだとしても、以前なら軽症ですんだのに年齢が高くなればなるほど、中等症→重症→重篤→死亡と深刻化していく傾向があるのです。
実際、不慮の事故で亡くなるケースの8割が高齢者。また、一命はとりとめても、事故を機に要介護状態になってしまう人も少なくありません。家の中で起こりがちな事故を未然に防ぐための対策を、早め早めに打っていきましょう。
我が家が年をとっても安全に暮らせる住まいになっているかどうか、改善すべきところはないか、敬老の日をきっかけに確認してみてはいかがでしょうか。
◆「誤嚥」対策
高齢者が不慮の事故で亡くなる原因の第1位は、「誤嚥等による窒息」。食べ物や飲み物が気道に詰まってしまうケースです。誤嚥対策についても触れておきます。
●よく噛んで、ゆっくり食べる
年をとると、ものを飲み込むための筋肉が衰え、唾液の量も減るので、喉の途中にものがつかえたり、食道ではなく気管に入ってしまったりして、窒息や誤嚥性肺炎が起きる危険が増してきます。食べ物は小さめに切って、適量を口に入れ、よく噛むこと。ゆっくりと「食べ」「飲む」ことを常に意識しながら食事を楽しみましょう。
●嚥下障害を防ぐトレーニングを
食べ物を噛んだり、ものを飲み込んだりする筋肉を衰えさせための、簡単なトレーニング法があります。テレビを見ながらでもできるので、ぜひ習慣にしてください。
①指や手の甲で唇のまわりや首をやさしくマッサージ。次に、肩と両腕を上げ下げしたり回したり、首を左右に曲げたり回したり……といったストレッチを。
②頬をふくらませたり、へこませたりする
③口を開けて舌を上下、左右に動かす。さらに、口を閉じた状態で舌を回す。頬の裏側に舌先を押しつけるような感じで、まず時計回りに、次は反時計回りに、大きくグルグル動かすのがポイント。
④大きく口を開けながら「ぱぱぱぱぱ」「たたたたた」「かかかかか」「ららららら」と発声する。早口言葉や歌を歌うのもおすすめ。
⑤食事の前に、口の中にある唾液腺を刺激するマッサージを行うと、唾液がたくさん分泌され、飲み込みがラクになる。親指以外の4本の指を耳の下から頬にあて、上の奥歯のあたりを後から前に10回ほど回してみよう。顎の骨の下の柔らかい部分を、耳の下から顎の先まで5カ所ぐらい親指で5回ずつ、そっと押してもいい。
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